キリスト教のお葬式の流れは?仏教との違いやカトリック・プロテスタントそれぞれの特徴を解説
公開日:2024/07/30
更新日:2024/07/30
お葬式は、故人が信仰する宗教・宗派に合わせた形式で行われます。日本では、仏式葬儀が一般的となっていますが、宗教や宗派が変われば、葬儀の意味や流れも異なります。
そのため、仏式以外の葬儀に参列する際に「どんな流れなの?」「マナーや参列の心構えは?」などで悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、キリスト教のお葬式の意味や流れ、マナーについて詳しく解説します。カトリックとプロテスタントの違いなども比較していますので、ぜひ最後までご覧ください。
● キリスト教のお葬式の意味や意義を知りたい人
● キリスト教のお葬式の流れを知りたい人
● キリスト教のお葬式のマナーを知りたい人
● カトリックとプロテスタントの葬儀の違いを知りたい人
1.キリスト教の葬儀とは
キリスト教でも、大切な人が亡くなった際は、葬儀(葬儀式)を行います。しかし、キリスト教の葬儀の意味や形式は、仏式葬儀とは異なり、また同じキリスト教でも教派によって内容が異なります。
そこでまずは、キリスト教の歴史や教派をわかりやすく解説するとともに、キリスト教の葬儀の意味を詳しく見ていきましょう。
キリスト教とは
キリスト教は、仏教やイスラム教徒と並ぶ世界三大宗教の1つとされています。キリスト教は、今から約2000年ほど前に始まったとされており、神の子である「イエス・キリスト」の教えを信仰する宗教です。
世界的に見ると、キリスト教の信者数は世界人口の約3割を占めており、世界で最も信徒数が多い宗教となっています。一方で、日本のキリスト教の信者数は、宗教を信仰する人口のうちの1%前後(令和5年 宗教統計調査では0.8%)であり、仏教や神道の信者数と比べると少ないですが、全国に教会があり広く信仰されている宗教です。
カトリックとプロテスタントの生死観
キリスト教には複数の教派がありますが、代表的なのは「カトリック」と「プロテスタント」の2つです。もともとは同じ宗教でしたが、ローマ帝国の分裂や宗教改革などの歴史の中で、教派が分かれていきました。
カトリックとプロテスタントでは、人の死に対する捉え方が異なります。
<カトリック>
キリスト教では、人は亡くなっても肉体が滅びるだけで、魂は神のもとに召されると考えられています。そのため、葬儀式でも故人の死を嘆き悲しむことはありません。
また、死後の魂は、生前の行いによって天国や辺獄、煉獄、地獄など行き先が異なるとされています。そのため、葬儀式では故人の罪を告白し許しを請い、故人が天国に召されて永遠の命を得られるように祈りを捧げるのです。
<プロテスタント>
プロテスタントも、カトリックと同じく、人は亡くなっても魂は神のもとに召されると考えられています。しかし、カトリックとは異なり、辺獄や地獄のような行き先はなく、みなが神のもとで安らかになるとされています。
そのため、カトリックのような罪の告白や許しを請う儀式はなく、神への感謝と遺族の慰めを中心とした葬儀式が行われます。
教派による用語の違い
カトリックとプロテスタントでは、葬儀に対する意味が異なるとともに、葬儀に関連する用語にも違いがあります。
カトリック | プロテスタント | |
---|---|---|
聖職者 | 神父・司祭 | 牧師 |
儀式 | ミサ | 礼拝 |
歌 | 聖歌 | 讃美歌 |
死 | 帰天 | 召天 |
キリスト教の葬儀に参列する際は、教派と用語の違いを確認しておくといいでしょう。
仏教や神道との違い
日本では、仏教や神道の信者数が多いため、仏式や神式の葬儀に参列する機会が多いでしょう。
宗派によって異なりますが、仏教では人は亡くなったあと、仏となって極楽浄土に行くという考え方があります。そのため、仏式葬儀では故人が無事に極楽浄土へ行けるように冥福を祈るとともに、故人との別れを偲びます。
神道では、人は亡くなったあと、霊魂は祖先の霊とともに家の守り神になるとされています。そのため、神式の葬儀は故人との別れを偲びつつ、祖先のもとへ送り出す儀式と位置づけられています。また、神道では死は「穢れ」と考えられているため、葬儀には穢れを祓い浄化するという意味もあります。
このように、キリスト教と仏教、神道とでは、それぞれの宗教における「死」に対する考え方が異なるため、葬儀の意味や意義にも違いがあるのです。
2.キリスト教のお葬式の一般的な流れ
キリスト教のお葬式は、カトリックとプロテスタントで儀式の内容や流れが異なります。また、キリスト教では、故人が危篤の状態になった段階から神父や牧師が立ち合い、臨終の儀式を始めます。そのため、医師から危篤を告げられたら、速やかに所属する協会に連絡しましょう。
キリスト教の葬儀の一般的な流れは以下のとおりです。
ここからは、教派ごとに葬儀の流れや内容を詳しく解説します。
臨終の儀式・納棺式
カトリックの場合
カトリックでは、信者の意識があるうちに、神父によって「病者の塗油の秘跡」を行います。「病者の塗油の秘跡」は、もともとはイエス・キリストが病気に苦しむ人々を励ますために行った特別な儀式でした。
現在では臨終の際に、神父が聖書を朗読しながら信者の額と両手に聖油で十字架をしるし、罪の許しを請う儀式となっています。その後、パンとぶどう酒が与えられる「聖体拝領」を行い、祈りを捧げ臨終を見取ります。
臨終を迎えたら、ご遺体を清めて病院から自宅に搬送し安置します。その後、通夜の集い前に神父立ち合いのもと「納棺式」を行います。
プロテスタントの場合
プロテスタントも、カトリックと同様に、信者の臨終には牧師が立ち会い「聖餐式(せいさんしき)」と呼ばれる儀式を行います。
聖餐式では、牧師がパンとぶどう酒を与え、聖書の朗読を行い、信者が無事に神のもとにたどり着けるように祈ります。これは、イエス・キリストが十字架にかけられる前に弟子たちとともに過ごした「最後の晩餐」にちなんだ儀式です。
臨終を迎えたら、水で濡らしたガーゼや脱脂綿で故人の口を濡らす「死に水」という儀式を行います。その後、牧師立会いのもと「納棺式」を行います。
通夜の集い・前夜祭
カトリックの場合
カトリックでは、もともとは通夜の習慣はありませんでした。しかし、近年では仏式の通夜に準じて「通夜の集い」を行うケースも増えています。
「通夜の集い」は、納棺式から引き続き行い、神父立ち合いのもと、聖書朗読や聖歌斉唱、献花などが行われ祈りを捧げます。
プロテスタントの場合
プロテスタントでは「前夜祭(または前夜式)」と呼ばれる仏式の通夜にあたる儀式を行います。前夜祭では、牧師の前夜祭宣言に始まり、賛美歌の斉唱や聖書の朗読、牧師の祈りが捧げられ、最後に参列者が献花をします。
前夜祭は納棺式から引き続き行われるのが一般的ですが、納棺式と兼ねて行われる場合もあります。
葬儀・告別式
カトリックの場合
カトリックでは、葬儀と告別式を別々に行います。本来、カトリックでは告別式は行わず、葬儀にあたる「入堂式」「ミサ聖祭式」「赦祈式(しゃとうしき)」の3つの式を行うのが基本でした。しかし、現在では日本の葬儀の形式に準じて、告別式を行うケースが増えています。
<葬儀の流れ>
1. 入堂式
↓
2. ミサ聖祭式(言葉の典礼・感謝の典礼)
↓
3. 赦祈式
ミサ聖祭式は、カトリックではもっとも重要とされている儀式で「言葉の典礼」と「感謝の典礼」の2つの儀式が行われます。言葉の典礼は、聖書の朗読や神父の説教、聖歌斉唱を行い、神のもとへ召される故人を祝福し、再会を祈る儀式です。「感謝の典礼」では、神父がパンとぶどう酒を祭壇に捧げ、その後信徒が祭壇の前でパンとぶどう酒を神父からいただく「聖体拝領」が行われます。
「赦祈式」は、故人の生前の罪の許しを請い、神のもとに召されて永遠の命が得られるように祈る儀式です。聖歌斉唱ののち、棺に聖水をかけて清め、香炉を振りながら棺のまわりを歩きます。その後、聖歌斉唱を行い葬儀は終了します。
<告別式の流れ>
1. 入堂聖歌
↓
2. 聖歌斉唱
↓
3. 弔辞・弔電紹介
↓
4. 献花
↓
5.遺族あいさつ
↓
6. 聖歌斉唱
告別式では、弔事や弔電の紹介が行われ、参列者が順番に献花します。最後に遺族の挨拶ののち、聖歌斉唱を行い告別式は終了となります。
ただし、厳格なカトリック教会では「入堂式」「ミサ聖祭式」「赦祈式(しゃとうしき)」以外の儀式を認めていない場合もあります。そのため、カトリックの葬儀を行う際は、必ず教会に葬儀の内容を確認することが大切です。
プロテスタントの場合
プロテスタントの葬儀は、カトリックと比較すると比較的自由度が高く、日本の仏式葬儀と同様に、葬儀と告別式を合わせて行うのが一般的です。
<葬儀・告別式の流れ>
1. 入場
↓
2. 聖書朗読・祈祷
↓
3. 牧師による説教
↓
4. 弔辞・弔電紹介
↓
5.祈祷・オルガン奏楽
↓
6. 告別の祈り・献花
↓
7. 遺族あいさつ
プロテスタントの葬儀・告別式では、牧師による祈祷の際にオルガン奏楽が入ることが特徴です。また、プロテスタントの葬儀は「ミサ」とは呼ばず「礼拝」と呼ぶことに注意しましょう。
出棺式
出棺式では、カトリックとプロテスタントともに、聖歌や賛美歌の斉唱、聖書の朗読を行い祈りを捧げます。参列者は棺に献花をして、最後に棺を閉じます。
火葬
キリスト教の埋葬は「土葬」が基本となります。しかし、日本では一部の地域を除き、土葬の許可を得ることが難しいため、葬儀・告別式のあとは、ご遺体を火葬場に搬送し火葬を行います。
火葬の前には、聖歌や賛美歌の斉唱を行い、神父や牧師とともに祈りを捧げる「火葬前式」を行います。火葬のあとは、仏式の火葬と同じように骨上げを行い、お骨を骨壷に収めます。
3.キリスト教の葬儀後の儀式
キリスト教では、故人は死後、神のもとに召され永遠の命を得られるとされています。そのため、葬儀の後も、故人を追悼・記念する儀式を行います。
<カトリックの葬儀後の儀式>
・ 死後3日目:追悼ミサ
・ 死後7日目:追悼ミサ
・ 死後30日目:追悼ミサ
・ 一周忌:死者記念ミサ
※以後、10年目、20年目に記念ミサを行う場合もある。
<プロテスタントの葬儀後の儀式>
・ 死後1ヶ月目:召天記念礼拝
・ 死後1年目:記念礼拝
・ 死後3年目:記念礼拝
・ 死後5年目:記念礼拝
・ 死後7年目:記念礼拝
4.キリスト教のお葬式のマナー
日本では仏式の葬儀が一般的であるため、キリスト教の葬儀を行う場合や参列する際には、事前に確認しておくべき注意点やマナーがあります。
ここからは、キリスト教のお葬式のマナーについて解説します。
喪主となる場合は参列者へのフォローを行う
ご自身が喪主となり、キリスト教の葬儀を行う場合は、事前に参列者の方に葬儀の流れなどを、案内状に添えてお伝えするといいでしょう。とくに、厳格なカトリックの葬儀式の場合、信者しか参加できない儀式もあります。
こうした注意点や案内をお伝えして、参列する方へのフォローを行うとスムーズに葬儀を執り行えます。
服装について
キリスト教の葬儀に参列する際も、基本的には仏式葬儀と同じように喪服を着用します。男性であれば、ブラックフォーマルのスーツ、女性はブラックフォーマルのスーツや黒のワンピースなどです。
男性も女性も、スーツは光沢のないものを選びます。また、女性の場合はスカートの丈はひざが隠れる程度の長さが適しており、トップスは胸元が見えないようなタイプを選びましょう。
キリスト教の葬儀では「トークハット」と呼ばれるベールの付いたつばのない帽子をかぶることがあります。ただし、トークハットを着用できるのは喪主や親族の女性のみであるため、参列者として葬儀に出る場合は着用を控えましょう。
香典について(御花料)
キリスト教の葬儀の香典は「御花料(おはなりょう)」と呼ばれています。御花料は、百合や十字架が描かれたキリスト教用の香典袋にお包みします。専用の香典袋の用意が難しい場合は、仏式用の香典袋は避けて白い無地の封筒を使用します。
香典袋の表書きには「御花料」や「献花料」「忌慰料」と書きます。仏式葬儀で用いられる「御霊前」は、プロテスタントでは使用できないので注意しましょう。
また、喪主としてキリスト教の葬儀を行った場合、気になるのは香典返しではないでしょうか?キリスト教では、香典返しという考え方はありませんが、仏式葬儀が一般的な日本では仏式の香典返しに準じて贈り物を送るのが一般的です。カトリックでは、30日目の「追悼ミサ」のあと、プロテスタントでは死後1か月後に行われる「召天記念礼拝」のあとに送るとされています。
「お悔やみの言葉」について
葬儀の参列する際は、受付でのご挨拶やご遺族へのご挨拶の中で「お悔やみ申し上げます」や「ご愁傷様です」「ご冥福をお祈りします」といったお悔やみの言葉をお伝えするイメージがあるかもしれません。
しかし、こうしたお悔やみの言葉は、キリスト教の葬儀ではふさわしくないため使わないように注意しましょう。キリスト教では、死は嘆き悲しむものではなく、故人が神のもとに召される「祝福」と捉えられています。そのため「哀悼の意を表します」や「安らかな眠りにつかれますよう、お祈り申し上げます」といった言葉を添えます。
5.キリスト教葬儀の意味や流れを理解して参列しましょう
キリスト教の葬儀は、日本で一般的とされる仏式葬儀とは考え方や儀式の内容が異なります。その背景には、キリスト教における生死観が深くかかわっています。
キリスト教の葬儀は、カトリックとプロテスタントという教派ごとに、流れや内容が異なるため、葬儀に参列する際は教派を確認しておくことが大切です。
ぜひこの記事を参考に、キリスト教の考え方や葬儀の意味、流れを理解して、ご遺族とともに故人の安らかな眠りをお祈りしてください。
メモリアルアートの大野屋では、葬儀・法要についてベテランスタッフが常に待機しており、お客様それぞれの質問や、必要な事をお聞きした上で、お悩みに沿ったご提案やご相談をさせていただきますので、安心して いつでもお気軽にご相談ください。