分骨とは?良くないというのは本当? 〜分骨の正しい手順や手続き、注意点、分骨後の供養方法を解説〜
公開日:2024/07/16
更新日:2024/07/17
納骨式は、故人の遺骨をお墓などに納める大切な儀式です。納骨式をいつ行うのか、どのような流れで進行するのか、そしてどのような準備が必要なのかを把握しておくことは、施主として納骨式を滞りなく執り行うために欠かせません。
そこでこの記事では、納骨式を行うタイミングや施主としての準備事項、納骨式にかかる費用相場などを詳しく解説します。納骨式に参列する際に知っておくべき服装や香典のマナーについてもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
● 分骨とはどのようなものか知りたい方
● 分骨をしたいが方法がわからない方
● 分骨した後の供養方法を知りたい方
はじめに
近年、葬儀の多様化に合わせて、納骨の方法もいくつかの選択肢が生まれてきています。その一つに、故人の遺骨を遺族・親類で分ける分骨(ぶんこつ)という方法があり、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。この記事では、「分骨をしたいけど何が必要?」、「分骨は良くないという説は本当?」といった疑問等に答えながら、分骨について詳しく解説します。分骨に関心がある方や分骨を迷っている方などにお役立ていただければ幸いです。
1.分骨とは?
分骨とは、亡くなった方のお骨を分けて、複数の場所で管理・供養することをいいます。分骨を行う理由や目的は、菩提寺の場所が遠方にあったり、兄弟がそれぞれ身近な場所で供養したいと望む場合などさまざまです。また、宗教上の慣習で分骨するほか、近年は遺骨の一部を身近な場所に保管して供養する「手元供養(てもとくよう)」を希望する人が増えていることから、分骨に対する関心も高まっています。
【分骨と似た用語】
遺骨の一部を保管する分骨と違って、骨のすべてをまとめて管理・供養することを「全骨(ぜんこつ)」といいます。そのほか、分骨と似ている言葉に「焼骨(しょうこつ)」や「粉骨(ふんこつ)」があります。
■焼骨
焼骨という言葉には、「火葬そのもの」を指す場合と、「火葬後に残ったお骨」のことを指す場合の2つの意味があります。後者は、「遺骨(いこつ)」と呼ぶこともあります。
■粉骨
粉骨とは、遺骨を細かい粉状にすることをいいます。散骨や手元供養をするときは、多くの場合、粉骨が必要になります。ただし、一度粉骨してしまうと元の遺骨の形に戻すことはできないため、親族で十分に話しあった上で検討したほうがよいでしょう。
2.分骨が良くないと思われている理由は?
「そもそも分骨って、してもいいの?」。そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。「分骨は良くない」という噂を耳にしたり、「法律的に大丈夫?」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、分骨をすることは法律上問題がなく、「分骨は良くない」といわれているのはさまざまな観点から誤解が生じていることが背景にあるようです。ここでは、よくある「分骨は良くない」と思われている理由について解説します。
■ 法律上許されていないという誤解
分骨に関する手続きは「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の第5条に規定されており、正しい手順を踏めば、分骨を行うことは法律上何も問題ありません。分骨は良くないと考えている方の中には、「遺骨を分けることは法律で禁止されているのではないか?」と誤って認識しているケースも少なくないようです。
■ 宗教上許されていないという誤解
「宗教的な観点から分骨は良くないのではないか?」と心配する方も多いようです。菩提寺や霊園から非常識だと思われてしまうのではないか...と考える方もいらっしゃいます。しかし、仏教や神道、キリスト教においても、分骨を良くないこととする教えはないので心配はいりません。
たとえば、仏教では、お釈迦さまのご遺骨「仏舎利(ぶっしゃり)」は8等分にされ、さらにご遺灰とそれを納めた容器も含めて10分割されたものが、弟子たちによってそれぞれの国に持ち運ばれたとされています。このことからも、仏教において分骨は古くから行われていることであり、良くないとは考えられていないことがわかるでしょう。
■ 親族の同意が得にくい
親族からの反対意見としては、バチが当たりそう、故人が成仏できない、体がバラバラになるようで受け入れられない、といった声があるようです。日本では、遺骨を一つのお墓に埋葬することが一般的であるため、そのような考えを持つ方も多くいらっしゃいます。
しかし、前述したように分骨は宗教的にも何ら問題ありません。また、西日本では、火葬後にお骨を箸で拾って骨壺に納める「骨上げ(こつあげ)」の際に、喉仏、胸、腰、足など一部の遺骨だけを骨壷に納める「部分収骨」が一般的であり、お骨上げの時点で分骨が行われているともいえます。
とはいえ、大切な方のお骨となると分骨に抵抗を感じる方もいらっしゃいますので、分骨は良くないことではない旨を丁寧に説明し、納得していただいた上で判断したいものです。
親族と十分に話し合うことなく分骨を決めてしまうと、後々トラブルに発展したり、親族間の関係性が悪くなってしまったりしかねません。分骨を行った後、ふたたび遺骨を一つにまとめることも非常に難しいので、あらかじめ親族の同意を得ることが重要です。
■ 遺骨を見ることに抵抗がある
中には、遺骨を目にすること自体が怖いと感じて分骨に抵抗をもつ方もいらっしゃいます。そのような方には、遺骨を分配する場面に立ち合う必要はないことを伝えましょう。また、粉骨をしてパウダー状にすると怖さを感じなくなる可能性もあります。パウダー状にすると手元供養をしやすいというメリットもありますが、粉骨すると元の状態には戻せなくなるため、粉骨についてもあらかじめ相談することが大切です。
■ 供養方法が決まっていない
分骨した後の遺骨の扱いが決まっていない状態では、親族の反対意見が出やすく、同意を得ることは難しいでしょう。分骨した遺骨の移し替え先や供養の方法などについて事前に共有することが必要です。
3.分骨手続きができる人とは?
いざ分骨することが決まっても、その手続きは誰にでもできるわけではありません。分骨手続きができる人は、遺骨の所有者に限られ、「祭祀継承者」と呼ばれます。分骨の決定や手続きのほか、お墓やお仏壇といった祭祀財産を継承し、維持管理することが「祭祀継承者」の役目です。
誰が祭祀継承者になるかは、基本的には「被相続人(故人)が生前に指定した人」とされています。祭祀財産は遺産分割には含まれず、相続税の対象にもなりません。祭祀継承者を指定する方法は、ほかの財産相続とは異なり、文書に限らず口頭でも良いとされています。しかし、万が一のトラブルを避けるためにも書面で残しておくと安心です。
4.分骨を行うタイミング
分骨を行うタイミングは大きく分けて2つ、納骨前に火葬場で行う場合と、納骨後にお墓から遺骨を取り出す場合がありますが、分骨の手続きを最もスムーズに行えるのは火葬場です。あらかじめ葬儀社に分骨したい旨を伝えておくと、分骨のための骨壷の用意などもしてくれます。しかし、さまざまな事情で納骨後に分骨を考えることもあるでしょう。ここでは、それぞれのタイミングで分骨を行う際の一般的な手順をご紹介します。
■ 火葬場で分骨する場合
前述した通り、最も簡単に分骨の手続きができるタイミングは火葬場です。
火葬場で分骨を行う場合、一般的には以下の手順で進めます。
①必要な数の骨壷を用意する
事前に葬儀社へ分骨することを伝え、分骨する数の骨壷を購入します。
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②火葬場で「分骨証明書」を発行してもらう
「分骨証明書」とは、分骨した遺骨が誰の遺骨であるかを証明する書類であり、分骨したお骨をお墓や納骨堂へ納骨する際に必要です。必要な分だけ証明書を発行してもらいましょう。お骨を手元に置いておく場合、分骨証明書は不要ですが、将来的にどこかへ納骨するときは必ず証明書が必要になります。
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③火葬後、骨上げの際に分骨を行う
焼骨後、事前に用意しておいた骨壺に遺骨を分けて納めます。
※火葬時の分骨をご検討の際は、まずは大野屋の相談センターにお気軽にご相談ください。
■ お墓から遺骨を取り出して分骨する場合
納骨後にお墓から遺骨を取り出して分骨するときは、墓地や霊園の管理者に「分骨証明書」を発行してもらいます。お墓から遺骨を取り出すときや新しいお墓に埋葬するときには、それぞれ儀式を行う必要があり、火葬場で分骨するのに比べて手順も費用も多くかかる点は注意しましょう。
①納骨されている墓地の管理者に「分骨証明書」を発行してもらう
すでにお墓に埋葬されている遺骨を取り出すときは、埋葬している墓地や霊園などの管理者に分骨したいことを伝え、「分骨証明書」を発行してもらいます。証明書は、分骨する骨壺の数だけ用意してもらいましょう。
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②遺骨を取り出す日程を決める
骨壷が納められている納骨室から遺骨を取り出す作業は、自力では大変なので、石材店に依頼することが一般的です。遺骨を取り出す日が決まったら、お墓から魂を抜くための「閉眼供養(へいがんくよう)」や新しいお墓に魂を入れる「開眼供養(かいげんくよう)」について、菩提寺や葬儀社に依頼しておきましょう。
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③「閉眼供養」を行い、遺骨を取り出す
当日まずは閉眼供養を行った後、遺骨を取り出します。その後、新しい骨壺などに遺骨を分配します。
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④分骨先に納骨する
それぞれの分骨先に「分骨証明書」を提出して納骨します。新しいお墓に埋葬する場合は、あわせて「開眼供養」の儀式を行います。
【改葬について】
墓地や霊園に納骨されているお骨を取り出し、別のお墓に改めて埋葬することを「改葬」といいます。改葬の手続きについては法律に定められており、正しい手順で行わなければなりません。遺骨の一部を他のお墓へ移す「分骨」とは、手続きが異なるため注意しましょう。
改葬を行う場合は、まず移転先となる霊園等の管理事務所から「使用証明書」(または「受入証明書」などとも呼ばれる)を発行してもらいます。次に、現在遺骨が埋葬されている墓地などの管理者から「埋蔵証明書」を発行してもらい、この二つの証明書と「改葬許可申請書」を自治体に提出して「改葬許可証」の交付を受けます。その許可証を遺骨が埋葬されている墓地や霊園の管理者に提示して遺骨を引き取り、新たに納骨する霊園等の管理事務所に改葬許可証を提出・申請し、遺骨を納骨するというのが一般的な改葬の流れです。
5.分骨する際の注意点
実際に分骨を行うときは、以下の点に気をつけましょう。
■ 分骨には遺骨所有者の承諾が必要
分骨は遺骨の所有者である「祭祀継承者」の承諾がなければ行うことはできません。
■ 親族からの了承を得る
決められた手続きを行えば、分骨を行うことは問題ありませんが、「分骨はよくないもの」と考える方がいらっしゃるのも事実です。トラブルを防ぐためにも、親族に丁寧に説明して了承を得るようにしましょう。
■ 本山分骨をすると遺骨は返還されない
本山へ分骨する場合、多くの人の遺骨をまとめて埋葬する「合祀(ごうし)」という方法で埋葬されることが一般的です。そのため、埋葬後に個別の遺骨を取り出すことはできません。一部の遺骨を手元に残しておくなど、後々困ることがないようにしましょう。
■ 火葬場では当日しか分骨証明書を発行しない場合がほとんど
火葬場で分骨証明書を発行してもらう場合、火葬当日しか受け付けてくれない施設がほとんどです。分骨証明書がないと、お墓に埋葬するときに遺骨の証明ができません。分骨を考えている場合は、忘れずに証明書の発行をお願いしましょう。
6.分骨した後の供養方法
分骨した遺骨はどのように供養すればいいのでしょうか。ここでは代表的な例を紹介します。
■ 新しいお墓に埋葬する
遠くにある先祖代々のお墓とは別に、お参りしやすい場所にお墓を用意して埋葬するケースが多いようです。納骨のときは「開眼供養」の儀式を行います。そのほか、永代供養墓や樹木葬を選ぶ方もいます。
■ 本山供養
宗教宗派の総本山に、遺骨を埋葬することを「本山供養」といいます。本山供養はさまざまな宗派でみられますが、とくに浄土真宗が有名です。故人が生前信仰心が深かった場合に行われることが大半ですが、寺院によっては故人の宗旨や宗派を問わず受け入れてくれることもあるようです。
■ 手元供養
遺骨の一部や遺灰を手元に置いて供養する方法を「手元供養」といいます。大切な人がなくなり、離れたくない、これからもそばにいてほしいという思いから、近年は多くの方に選ばれている供養方法です。遺骨や遺灰をミニ骨壷などの小さな容器に収めて自宅に置いて供養するほか、スペースを設けたジュエリーに遺骨を収めて身につける方法もあります。
※メモリアルアートの大野屋では、遺骨ジュエリー「SoulJewery」シリーズをご用意しています。手元供養をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
■ 散骨
散骨とは、海や山などに遺骨を撒いて供養する方法です。故人が生前、自然が好きだった場合などに選ばれることが多いようです。散骨については「墓地、埋葬等に関する法律」に規定されていないため法による手続きはありませんが、自治体によっては散骨できる場所が条例で定められていることもあるため、事前に確認することをおすすめします。
海や川での散骨は水産物などへの風評被害のおそれがあるほか、山での散骨は土地所有者や近隣から苦情が寄せられるケースもあります。国内では散骨に関する法律が未整備であることから、トラブルに発展しやすいため、まずは信頼できる葬儀社や専門業者に相談することをおすすめします。
7.分骨にまつわる費用
分骨を行うときに必要となる費用は、分骨を行うタイミングやその後の供養方法などによって異なります。主な費用を以下にまとめましたので、ご自身のケースと照らし合わせてお役立てください。
■ 分骨用の骨壷代
遺骨を分配する際は、分ける数だけ骨壷が必要になります。デザインなどにより料金はさまざまですが、一般的には5千〜1万円のものが多く、装飾を施したものを選ぶと3万円前後になる場合もあります。
■ 分骨証明書の発行費用
遺骨を収める容器同様、分ける数だけ証明書が必要です。発行手数料は発行元によって異なりますが、一般的には100〜500円程度とされています。
■ 墓石を開ける作業にかかる費用
すでに埋葬されているお骨をお墓から取り出す場合、基本的には石材店に依頼するため作業費用がかかります。一般的には、5千〜1万円程度が目安です。
■ 閉眼法要および開眼法要の費用
遺骨をお墓から取り出して分骨し、新たに埋葬する際は「閉眼法要」と「開眼法要」の儀式を行うため、僧侶へのお布施が必要です。お布施の金額に決まりはありませんが、1〜3万円が相場とされています。
■ 本山へのお布施(本山供養を行う場合)
本山供養を希望する場合は、埋葬を希望する宗派の総本山に費用を払います。費用は宗派によっても大きく異なり、分骨の場合は数万円程度のところが多いようですが、同じ宗派でも供養の内容によって金額に差を設けている場合があるため確認が必要です。
■ 新たにお墓を用意する費用
先祖代々のお墓とは別に新しくお墓を持つ場合は、墓石などの料金に加えて、墓地使用料や年間管理費などの費用がかかります。ただし、近年では樹木葬などの選択肢も増えており、納骨先によって費用相場は大きく異なります。
墓地や霊園にお墓を新しく用意する費用の相場は、墓石代や永代使用料を含めて100〜200万円、そのほかに管理費が必要です。一方、樹木葬は基本的に墓石がない分、費用も低く抑えられます。樹木葬の種類や埋葬方法、地域などによりますが、複数の遺骨を一緒に埋葬する合祀型で5〜20万円、個別の区画が設けられている個別型で50〜100万円、個別の区画に家族の遺骨を埋葬する家族型で50〜150万円程度とされています。
※メモリアルアートの大野屋では、お墓に関するさまざまな情報を下記サイトでご提供しています。
■ 粉骨費用
手元供養や散骨を行う際は、遺骨をパウダー状にする必要があり、粉骨にかかる費用が必要です。粉骨費用は業者によって異なりますが、1〜3万円程度が多いようです。
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■ 散骨費用
葬儀社や専門業者に依頼して散骨を行うときは散骨費用がかかります。たとえば海洋散骨の場合、1隻の船を家族で貸し切る場合は20〜30万円、複数の家族が乗り合う合同散骨では10万円前後が目安とされています。遺族が立ち会わず、業者に散骨を委託する場合はより安く費用を抑えることができます。
■ 手元供養の費用
分骨した遺骨をミニ骨壷やジュエリーに入れて手元供養を行う場合は、骨壷やジュエリーを購入します。デザインや大きさによって価格はさまざまですが、大切な方のお骨を守りながら、毎日手を合わせたり、身につけたりするものなので、ご自身やご家族が気に入ったものを選ぶとよいでしょう。
8.分骨についてのまとめ
● 分骨とは、亡くなった方のお骨を分配し、複数の場所で管理・供養すること。
・決められた手続きを行えば、法律的にも宗教的にも分骨は何も問題はない。
・「分骨は良くない」と思われている理由は、さまざまな誤解や迷信によるものが大きい
・分骨に抵抗を感じる人もいるので、分骨を行う際は必ず親族の了承を得ることが重要
● 分骨の手続きは、火葬場で行うのが最も簡単。
・お墓から遺骨を取り出して分骨する場合は、火葬場での分骨より手順と費用がかかることが多い
・火葬場での分骨証明書の発行は、火葬当日しか受け付けない施設が大半なので注意が必要
● 分骨した後の供養方法は親族とよく相談し、同意を得た上で決めることが重要。
・分骨した遺骨を新しいお墓に埋葬する場合は、「開眼供養」の儀式を行う
・「本山分骨」をした場合、遺骨は返還されないため、一部を手元に残しておくことも検討する
・近年増えている「手元供養」では、遺骨をジュエリーに入れて身につけることも可能
・「散骨」を行う場合は、事前に自治体に確認した上で、専門業者などに依頼すると安心
メモリアルアートの大野屋では、葬儀・法要についてベテランスタッフが常に待機しており、お客様それぞれの質問や、必要な事をお聞きした上で、お悩みに沿ったご提案やご相談をさせていただきますので、安心して いつでもお気軽にご相談ください。