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テーマ:葬儀の準備

「湯灌の儀」とは? 〜その意義や手順、「エンバーミング」「死に化粧」「エンゼルケア」との違いを解説〜

公開日:2023/11/17

更新日:2024/04/17

「湯灌の儀」とは? 〜その意義や手順、「エンバーミング」「死に化粧」「エンゼルケア」との違いを解説〜

葬儀アイコン目次

こんな方にオススメ!

● 「湯灌の儀」とは何か知りたい方

● 湯灌の儀にかかる費用の相場を知りたい方

● 「死に化粧」「エンバーミング」「エンゼルケア」との違いを知りたい方

1. 湯灌(ゆかん)の儀とは

亡くなった方を見送る際、日本では古くからさまざまな儀式やしきたりがあります。その多くは仏教の教えに由来し、伝統的な文化や慣習によって日本独自の変化を遂げながら受け継がれてきました。
この記事では、納棺前に行う「湯灌の儀」の意義や儀式の流れ、費用相場などを紹介するとともに、混同されやすい「エンゼルケア」や「死に化粧」、「エンバーミング」などについてもあわせて解説します。

■「湯灌の儀」とはどのような儀式?

納棺の前に、故人のご遺体を湯水で清める儀式を「湯灌の儀」といいます。もともとは家庭内で家族が行うことが普通でしたが、遺族の負担が大きいことから、現在は葬儀社や専門の業者に依頼することがほとんどです。ただし、今日では病院で最期を迎えるケースが多く、その場合は病院のスタッフの手で行われます。病院では、ガーゼや脱脂綿をアルコールに浸して全身を拭き清める「清拭(せいしき)」が一般的です。
時代の変化とともに、清拭という簡素な形で行われることが多くなった湯灌の儀ですが、自宅や葬儀会場で湯灌を行ってくれる葬儀社や専門業者もあります。その場合は、湯灌師や納棺士など専門的な知識や技術をもつスタッフが儀式を行うことが多いようです。湯灌の儀が葬儀一式に含まれていたり、内容や費用などは業者によって異なるため、希望する場合は葬儀社に問い合わせてみましょう。

2. 湯灌の儀を行う意味

現在、病院や施設で亡くなった場合は、清拭により遺体をきれいな状態にしてくれるため、湯灌の儀は必ず行わなければならないものではありません。儀式について理解しておくことは、湯灌の儀を行うべきか判断に迷ったときに役立つでしょう。ここでは、湯灌の儀の意味や目的についてご紹介します。

■ 古くからの日本の習わし

湯灌の儀は、故人が息を引き取った後、ご遺体を清める儀式として日本で古くから行われてきました。かつて家庭内で行われていた湯灌の儀は、使用する水の汲み方や捨て方などにもさまざまな決まりごとがあったといわれています。たとえば、湯灌用の水を汲みに出かけた人を後から誰かが呼びに行く「声かけ水」や、故人にお湯をかける際に本来右手で持つひしゃくを左手で持つ「左びしゃく」などはその一例です。また、湯灌に使った湯を日光に当てるとたたりがあると信じられていたことから、使い終わった湯は陽の当たらない場所に捨てるようになったともいわれます。しかし、最近では、自宅で湯灌の儀を行う際に使用した湯は業者が持ち帰って処分するなど、古くから伝わる風習も変化しつつあるようです。

■湯灌の由来と宗教とのつながり

かつては、川の水で身体の汚れを落とし、心身を清めることを「斎川浴(ゆかわあみ)」と呼んだことが、「湯灌」の語源になったという説があります。また、湯灌の儀は、古くは死者の魂をよみがえらせる呪術的な意味合いがあったともいわれています。
現在は、現世での故人の苦しみや迷いを洗い流すという意味合いと、生まれたての赤ちゃんが産湯に浸かるように、清らかな身体で来世へ旅立ってほしいという願いを込めて行われることが多いようです。このように宗教的な側面もありますが、湯灌の儀はキリスト教や神道を含めて宗教や宗派に関係なく誰でも行うことができます。

■故人の魂をなぐさめ、遺族の心を癒す儀式

湯灌の儀は、遺族が改めて故人と向き合い、しっかりとお別れをして心の整理をつけるための時間でもあります。生前に入浴をして1日の疲れを洗い流すのと同じように、一生を終えた故人の疲れを家族の手で洗い流し、労をねぎらうことは、ご遺族の心のケアにもつながります。湯灌の儀を行った後は、故人の顔もやわらぎ、来世へ旅立つためのお手伝いをできたことに心癒されるご遺族も多いようです。

3. 儀式の流れ

湯灌の儀は、専用の設備がある葬儀場、または故人の自宅で行います。葬儀社に依頼すると、湯灌師または納棺師などのスタッフが儀式を進めてくれます。なお、自宅で行う場合は専用の浴槽を室内へ運び入れるため、スペースの確保と、移動などにかかる費用が別途必要になることに注意しましょう。

湯灌の儀を行うタイミングは、一般的には納棺の前とされています。儀式にかかる時間は、1時間〜1時間半程度です。以下に儀式の流れをご紹介しますが、業者によって手順は多少異なる場合があります。

1.準備
葬儀場で行う場合は専用の設備がある部屋、自宅で行う場合は浴槽を室内へ搬入し、浴槽を準備。ご遺体の全身にマッサージを行い、硬直を緩和させる。
2.移動
肌を見せないようタオルなどを身体にかけて、ご遺体を浴槽まで移動する。
3.儀式の説明(口上)
準備ができたら、スタッフが湯灌の儀について説明を行う(「口上」とも呼ばれる)。
4.お清め(逆さ水の儀)
立ち会った遺族や親族が、交替で故人の足元から胸に向かって順番に湯をかけてご遺体を清める。お清めには、冷たい水に熱いお湯を加えて温度を調節した「逆さ水」が用いられる。
5.洗髪、洗顔、顔剃り
シャンプーを使って髪を洗い、顔の産毛やひげの手入れをする。お手入れが済んだらやさしく顔を拭き、ドライヤーで髪を乾かす。
6.全身のお清め
シャワーを使って全身を洗い清め、タオルで水滴を拭き取る。
7.着付けとお化粧
ご遺体を床に移して白装束などの着付けを行い、髪をセットし、お化粧を施す。着せ替えは、葬儀社が用意した衣装を着付けることが一般的だが、故人が生前に好んだ衣服を着せる場合もある。

<ONE POINT>「逆さ水」について

お風呂などの湯加減を調節するとき、普通は熱い湯に水を加えて適温にしますが、「逆さ水」は水を入れてから湯を加えるという通常とは逆の手順でぬるま湯をつくります。これは仏式の葬儀における「逆さごと」といわれるしきたりの一例であり、死を非日常ととらえ、生者と死者を区別する考え方に基づくものです。その他にも、死装束を左前に着せる、足袋を左右逆に履かせる、ご遺体にかける掛け布団を上下逆にする、枕元に飾る屏風を逆さに立てるなど、葬儀ではさまざまな逆さごとの風習があります。弔事でのふくさの包み方も慶事とは逆です。

4. 立ち会うときのマナー

■最期の瞬間の過ごし方

湯灌の儀は、基本的には湯灌師など葬儀社のスタッフが行いますが、その場合も遺族が立ち会えるケースがほとんどです。故人の肌に直接触れることのできる最後のお世話となるので、できるだけ家族で立ち会うとよいでしょう。ここでは、儀式に参加する際のマナーや適した服装などについてまとめます。

■立ち会うことができる関係者の範囲は?

基本的に、湯灌の儀に立ち会うのは遺族や親族のみとされています。儀式の際は、タオルで肌が見えないように覆い、部屋を目隠しで仕切るなど、できるだけ人の目に触れないようにするため、故人の裸がさらされることはありません。儀式は、生前に入浴中の姿を多くの人に見せることがないのと同様、故人のご意向がある場合を除いては、できるだけご遺族や親族だけで行いたいものです。そのほかの関係者が立ち会いを希望してきた場合は、参加をお断りしてもまったく問題ありません。
なお、小さいお子さんが立ち会う場合は、大人がきちんと付き添うようにし、無理に参加させることは避けましょう。また、儀式の途中で退出したり、途中から参加したりしてもマナー違反にはなりません。

■立ち会うときの服装は?

湯灌の儀に立ち会う際の服装に特に決まりはなく、平服で参加して構いません。この場合の平服とは、普段着のことではなく、略喪服のことを指します。カジュアルな服装は避け、黒やグレー、濃紺など、落ち着いた色のスーツやワンピースを選ぶとよいでしょう。 湯灌の儀の後に通夜を控えている場合は、喪服で立ち会い、そのまま通夜に参加することが多いようです。服装に迷う場合は、儀式が行われるタイミングによって決めるというのも一つの方法です。

5. 費用の目安

病院などで行う清拭とは別に「湯灌の儀」を行う場合、葬儀のオプションとして追加料金が発生するケースがほとんどです。費用は業者によって異なりますが、5〜10万円程度が相場とされています。また、儀式の内容によっても費用は変動し、清拭と身支度だけを行う場合は5万円程度、専用の浴槽やシャワーなどを使用して体を洗ったり洗髪をしたりする場合は10万円前後になることが多いようです。費用の内訳としては、湯灌師や葬儀社スタッフの人件費、専用の施設を利用する場合は施設料、着物のレンタルのほか、移動式の浴槽を自宅に運び込む場合は別途料金がかかります。
そもそも湯灌の儀に対応している葬儀社はあまり多くないので、必ず行いたいという希望がある場合は、事前にサービスの有無を確認し、見積もりを取り寄せておくことをお勧めします。

6. 納棺前に行うその他の儀式

湯灌の儀以外にも、納棺前に行われる儀式や処置があります。「死に化粧」、「エンバーミング」、「エンゼルケア」など、耳にしたことはあってもよくわからないという方も多いのではないでしょうか。ここでは、臨終後から納棺前に行われる儀式などについて解説します。

■ 末期(まつご)の水

医師に臨終を告げられたら、立ち会っている家族や近親者で「末期の水」をとります。末期の水は「死に水」ともいい、昔は臨終の間際に行われていました。死を迎えつつある人の渇きを癒し、最期のはなむけとして水を与えるという意味合いがあったためです。これは、お釈迦さまが臨終のときに鬼神が水を捧げたという故事に由来しており、医学が発達する以前は蘇生を願う儀式としての側面もありました。現在は、故人が来世で渇きに苦しむことがないように、という願いを込めた儀式とされています。
手順としては、割り箸や新しい筆の先に脱脂綿とガーゼを巻きつけて白い糸でしばり、軽く水を含ませて故人の唇をしめらせます。遺族、親族、友人・知人と、故人との縁が深い人から順に、臨終に立ち会った全員で行うことが一般的です。とはいえ、小さなお子さんなどは無理に行う必要はありません。

■ 死に化粧

湯灌でご遺体を清めた後は、「死に化粧」を施します。亡くなった方の最後の姿を美しく見せたいという遺族の願いとともに、あの世へと旅立つ故人の身だしなみを整えるという意味合いが込められています。
まずは髪を整え、爪が伸びていたら切り揃えます。男性はひげを剃り、女性には薄化粧をします。顔がやつれている場合は、口に綿(含み綿)を入れてふっくらとさせ、できるだけ元気なときの姿に近づけるようにします。自宅で亡くなった場合、これらの処置を納棺師や葬儀社に任せる方も増えており、病院で亡くなった場合は病院のスタッフが行ってくれることがほとんどです。

■ エンゼルケア

臨終後の遺体処置や死に化粧までの一連のケアについて、近年は「エンゼルケア」と呼ぶことも多く、病院によっては専門スタッフがいることもあります。ご遺体の外見を美しく整えることは、故人の人格や尊厳を守るとともに、遺族の心のケアにもつながることから、その重要性が認識されるようになってきました。

■ エンバーミング

エンバーミングとは、ご遺体を衛生的に長期間保存する処置のことです。遺体の殺菌・消毒を行うとともに、科学的な処理を施して生前の姿に近づけるもので、欧米では古くから普及していました。
エンバーミングでは、血液・体液を専用の薬剤と入れ替えることにより腐敗を防ぎ、遺体を長期間衛生的に保存することができます。たとえば、事故や病気でご遺体が生前の姿と大きく異なる場合や海外から航空機で遺体搬送を行う場合、さまざまな事情で葬儀まで日数がかかる場合などに利用される処置です。
エンバーミングは、エンバーマーと呼ばれる専門家によって行われ、費用は一般的に15〜25万円程度とされています。地域によっては専門業者がいない場合もあるため、希望される方は葬儀社に確認が必要です。

7. まとめ

●「湯灌の儀」とは、納棺前にご遺体を湯水で清める儀式のこと。

・病院で亡くなった場合は、全身をアルコールで拭く「清拭」を行うことが一般的。
・湯灌の儀を希望する場合は、葬儀社に対応の可否をあらかじめ確認しておくとよい。
・葬儀の基本プランには含まれないことが多いため、その場合は追加費用が必要。
・かかる費用は、清拭のみで5万円程度、浴槽を使用する場合で10万円前後が相場。

●故人の現世での悩みや苦しみを洗い流し、安らかな来世への旅立ちを願う儀式。

・湯灌の儀には宗教的な側面もあるが、宗教や宗派に関わらず誰でも行うことができる。
・故人の魂をなぐさめる意味合いを持つと同時に、遺族の悲しみを癒すプロセスでもある。

●湯灌の儀は、納棺の前に、自宅や葬儀場で行われることが一般的。

・準備開始から儀式が終わるまで、かかる時間はおおよそ1時間〜1時間半程度。
・専用の浴槽を搬入できるスペースがあれば、自宅で行うよう手配してくれる業者もある。
・立ち会いは、遺族や親族のみが基本。途中参加や退出もマナー違反にはならない。
・服装は平服でよいが、その後に通夜を控えている場合は喪服で参加することが多い。

●「エンバーミング」とは、遺体を衛生的に長期間保存するための科学的処理のこと。

・「エンバーミング」は、専門の施設でエンバーマーと呼ばれる有資格者の手で行われる。
・「死に化粧」とは、湯灌を終えた後、化粧を施して故人の姿を美しく整えることをいう。
・「エンゼルケア」は、臨終後に行われる遺体処理や死に化粧など一連のケアを指す。

メモリアルアートの大野屋では、美しい花にこだわった花祭壇プランをご用意。ご家族の想い、ご要望にお応えするため、湯灌の儀など様々なオプションをご用意しています。

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