香典辞退とは?伝え方や喪主側・参列者側それぞれのマナー、正しい対応法決定版!
公開日:2025/05/28
更新日:2025/05/28

葬儀の場で「お気持ちだけいただき、香典は辞退したい」と考えるケースが増えています。しかし、いざご自身が喪主となった場合、香典辞退のマナーや伝え方が分からず、不安を感じる方も多いはず。また、香典辞退の葬儀に参列する際も「本当に香典を持参しなくても大丈夫なのか」と悩んでしまうこともあるでしょう。
そこで本記事では、香典辞退が広がる背景や、香典辞退のメリット・デメリットを解説するとともに、香典辞退を伝えるタイミングや例文集、香典辞退のマナーや注意点を、喪主の視点、参列者の視点の双方から詳しくご紹介します。家族や故人の意向に沿いながら、失礼のない形で香典辞退を進めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
● 香典辞退の背景を知りたい人
● 香典辞退の理由を知りたい人
● 香典辞退のメリットについて知りたい人
● 香典辞退のデメリットについて知りたい人
● 香典辞退の伝え方・例文を知りたい人
● 香典辞退のマナーや注意点を知りたい人
1.香典辞退とは?
香典(香料・御香典)は、故人への哀悼の意を示すとともに、葬儀費用の一部を助けるために参列者が持参する金銭のことです。日本の仏式葬儀をはじめ、多くの宗教・宗派で香典を包んで持参することが一般的とされています。
一方で近年、遺族側から「香典はお気持ちだけで結構ですので、ご辞退申し上げます」と表明し、金銭の受け取りを遠慮するケースが見られます。これを「香典辞退」と呼びます。
香典辞退の意思表示は、葬儀の案内状や受付に掲示する案内板などで行われます。参列者は案内に従い、香典を持参せずに参列し、場合によっては後日改めて供花や書状などで弔意を示すのが一般的です。
香典辞退に慣れていない方も多いかもしれませんが、喪主および参列者の双方が故人や遺族の意向を尊重し、失礼のない対応を心がけましょう。
2.なぜ香典辞退が増えている?喪主が香典辞退を選ぶ主な理由
近年、葬儀の形式が多様化しており、家族や喪主が「香典の受け取り自体を見直したい」と考えるケースが増えています。ここでは、主に喪主側が香典辞退を選ぶ背景として、代表的な3つの理由をご紹介します。
家族葬や直葬(小規模葬儀)の普及
規模を絞った家族葬や、通夜・告別式を行わない直葬が広まったことで、葬儀の参列者数が大きく減少しています。小規模な葬儀は親族だけで行うケースが多いため、香典をまとめて管理・返礼する余裕がなく「お気持ちだけで結構です」と辞退を宣言することが一般的になってきました。
遺族の香典返しの手間軽減
香典をいただくと、管理や返礼品の選定や手配、発送作業など、葬儀後に多くの手間と時間がかかります。喪主や遺族が手続きに追われず、故人との別れの時間に集中できるよう、あえて香典返しの負担を減らすために辞退を選ぶケースも増えています。
参列者の経済的負担の軽減
遠方の親戚や仕事関係者などには、故人の葬儀の連絡をしたくても、交通費や香典などの経済的負担をかけてしまうことを心苦しく思う方もいます。香典辞退を宣言することは、参列者が気兼ねなく弔意を示せる配慮にもつながります。
3.香典辞退のメリット
香典辞退には、喪主・遺族と参列者の双方にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、主なメリットを2つ紹介します。
遺族の負担軽減
香典を受け取る場合、以下のような細かい事務作業が発生します。
香典の管理・分類
当日の受付で集まった現金を金種ごとに仕分け、金額を正確に記録する。
会計処理
集計結果をもとに帳簿を作成し、葬儀費用との収支を照合する。
礼状・礼状書き
香典をいただいた方へ一軒一軒礼状を作成し、宛名の確認や発送手配を行う。
返礼品の選定・発注・発送
予算や品目選び、のし紙の指定、梱包や配送管理など。
期日管理や正確さが求められるこうした作業は、葬儀後の悲しみに暮れる喪主や遺族にとって、大きな負担になりがちです。香典辞退を選ぶことで、こうした一連の事務手続きや、手配ミスへの不安といった負担も軽減され、故人との別れに向き合う時間が生まれます。
参列者の経済的負担軽減
遠方から駆けつける親戚や友人、仕事関係者にとっては、交通費に加えて香典の用意が重い負担になることがあります。香典辞退を宣言することで「お気持ちだけで結構です」というメッセージが明確になり、参列者が安心して弔意を示せるようになります。
4.香典辞退のデメリット
喪主・参列者の双方にとって、メリットがある香典辞退ですが、一方で、以下のような注意点やデメリットも存在します。事前に理解し、適切な配慮を行いましょう。
参列者の弔意が表現しにくい可能性
香典辞退の案内を受けた参列者は、金銭以外でどのように弔意を伝えればよいか戸惑うことも少なくありません。そのため、必要に応じて、会葬御礼品や供花、後日の訪問など代替手段をあらかじめ案内しておく方法も検討しましょう。
当日の混乱を防ぐための配慮が必要
案内状や式場受付に「香典辞退」の旨を明確に掲示しないと、当日になって参列者が香典を持参してしまい、受付が混乱する恐れがあります。また、葬儀社スタッフや受付係にも事前に周知し、参列者からの問い合わせに対応できる体制を整えておきましょう。
遺族側の経済的負担
香典辞退をすると、葬儀費用の一部を参列者の香典でまかなえないため、全額を遺族自身で負担する必要があります。特に大規模な葬儀の場合は費用がかさむため、事前に費用見積もりを取り、自己資金やほかの資金手段を確保しておくことが重要です。
5.【喪主向け】香典辞退のタイミング 伝え方とマナー
喪主として香典辞退を伝える際は、訃報の連絡時から葬儀後の礼状まで、一貫して丁寧かつ明確に意思を示すことが大切です。
ここからは、香典辞退を伝えるタイミングと、相手に合わせた伝え方の例文、そして香典辞退をスマートに伝えるためのポイントを解説します。
香典辞退の3つのタイミング
香典辞退を伝えるタイミングは、葬儀の案内から当日、さらにその後の通知まで大きく3つに分けられます。各場面での適切な伝え方と注意点を押さえておきましょう。
訃報・案内状での伝達
親しい友人・知人やご近所の方への訃報連絡時には「誠に恐縮ですが、香典はご辞退申し上げます」とひと言添えましょう。
また、葬儀案内状(ハガキや封書)の文末には、「故人の遺志により、香典並びにご厚志は固くご辞退申し上げます」と明記すると、参列者に事前に理解してもらえます。
お葬式当日の受付
式場受付台の案内板に「香典辞退」の見出しを大きく掲示し、目立つ場所に配置します。受付係は参列者に対して「本日はお気持ちだけで結構でございます」と口頭でもお断りを添えると混乱が少なくなります。
葬儀後の死亡通知状(会葬礼状)
会葬礼状には参列御礼の文章に続けて「香典は辞退させていただきましたが、ご厚情を賜り心より御礼申し上げます」などのフォローの一文を入れることで、改めて感謝の意を伝えられます。
相手に合わせた香典辞退の伝え方・言い方の例文
香典辞退を伝える文面は、関係性によって、トーンや表現を変えることが大切です。ここで、職場・親族・友人それぞれに適した会葬礼状の例文をご紹介します。
■ 職場向けの例文
伝え方のポイント
・忌引き休暇の取得連絡とあわせて伝える
・記録に残るメールがおすすめ
・会社の就業規則や直属上司への配慮を忘れずに
例文(メールの場合)
件名:忌引き休暇の取得および参列・香典辞退のお願い
〇〇部 〇〇課長
お疲れ様です。私事で恐縮ですが、父〇〇が〇月〇日に永眠いたしました。
つきましては、〇月〇日から〇日間、忌引き休暇を取得させていただきたく存じます。
休暇中の業務は〇〇さんに引き継いでおりますので、ご確認いただけますと幸いです。
なお、誠に勝手ながら家族葬にて執り行うため、参列および香典のご厚意はご辞退申し上げます。
ご多用のところ恐れ入りますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
■ 親族向けの例文
伝え方のポイント
・まず電話や口頭での訃報連絡
・後日、葬儀の案内状で正式に香典辞退を通知
・敬称や時候の挨拶を省略せず丁寧に
例文(案内状の場合)
拝啓 初秋の候、皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、このたび父〇〇が去る〇月〇日に永眠いたしました。
葬儀につきましては、下記のとおり執り行いますので、ご多用中恐縮ではございますが、ご参列賜りますようご案内申し上げます。
記
日時:令和〇年〇月〇日(〇) 午前10時 開式
会場:〇〇斎場(住所・電話番号)
なお、故人の遺志により香典・供花につきましては、誠に勝手ながら固くご辞退申し上げます。
皆様にはご足労をおかけいたしますが、どうぞご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
略儀ながら書中をもって、ご案内とお願いを申し上げます。
敬具
令和〇年〇月〇日
喪主 〇〇〇〇
住所 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
電話番号 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
■ 友人、知人向けの例文
伝え方のポイント
・メールやSNSのDMなど、相手との日常的な連絡手段を使用してもよい
・生前の感謝とお詫びを簡潔に
例文(メールやDMの場合)
突然のご連絡失礼いたします。
私事で恐縮ですが、父〇〇が〇月〇日に永眠いたしました。
生前のご厚情に深く感謝申し上げます。
葬儀は家族のみで執り行う予定のため、誠に勝手ながら香典・供花は辞退させていただきたく存じます。なにとぞご理解賜りますようお願い申し上げます。
なお、後日改めて会葬礼状をお送りいたしますので、お手数ですがご覧いただければ幸いです。
喪主 〇〇〇〇
香典辞退をスマートに伝えるポイント・マナー
香典辞退を失礼なく、かつわかりやすく伝えるにはいくつかのポイントがあります。表現の統一や感謝の言葉など、心得ておきたいマナー・注意点をまとめました。
辞退の意思を明確に表現する
香典辞退を伝える際は、曖昧な表現を避け「香典はご遠慮申し上げます」「ご厚意は恐縮ですがご遠慮申し上げます」など、能動的かつはっきりした言い回しを使いましょう。
さらに「お気持ちだけで結構です」といったフレーズも併用すると、参列者に「お金ではなく心遣いがありがたい」という意図が伝わりやすくなります。
感謝の意を伝える
辞退の断り文句だけでは冷たい印象になると感じる場合は「恐れ入りますが」「お心遣いに深く感謝申し上げます」といった前置き・後置きを加え、相手の弔意への敬意を示しましょう。
6.【喪主向け】香典辞退を伝えても香典を受け取ってしまった場合の対応
香典辞退の案内をしていても、当日に持参される方や後日に「あえて渡したい」とのお申し出を受けることがあります。そのような場合の基本的なマナーと、トラブルを避けるための具体的な対応策をご紹介します。
やむを得ず受け取った場合の対応
やむを得ず受け取ることになった場合は、まずはその場で「ご辞退のご案内を差し上げていたにもかかわらず、お心遣いをいただき、深く恐縮しております」といった謝意の気持ちを伝えましょう。
そのうえで、後日返礼品や手紙で感謝の気持ちを伝えます。
香典返しは必要?香典返しを行う場合の相場
香典辞退をお伝えしていたにもかかわらず、参列者から香典をいただいてしまった場合、基本的には「香典返し」は不要とされています。
喪主や遺族の気持ちとして、何かお礼をしたい場合は、お礼状をお送りするだけでも十分です。たとえば、「このたびはご厚意を賜り、誠にありがとうございました。故人もさぞ喜んでいることと存じます」という文面を添えれば、形式にとらわれず心のこもった気持ちを伝えられます。
しかし、受け取った香典の金額が多かったり、立場が上の人だったりした場合は、香典返しや返礼品を用意しても問題ありません。一般的な相場である「半返し」(いただいた金額の30〜50%程度)を目安に品物を選ぶとよいでしょう。香典返しには、のしを掛けたお茶や海苔、タオルなど日持ちのする消耗品が定番です。
7.【参列者向け】香典辞退されたときの参列者のマナーと対応法
喪主から「香典辞退」の案内を受けたら、まずはその意思を尊重し、無理に金銭を用意しないことが大切です。ただし、何もせずに黙って参列するだけでは心苦しい場合もあるでしょう。
ここでは、香典以外で弔意を示す主な方法を4つご紹介します。
弔電を送る
弔電を送るのは、遠方で参列できない場合だけでなく、香典辞退をされた場合にも有効です。
故人との思い出や喪主へのねぎらいの言葉を短くまとめ「ご尊父様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。ご遺族の皆様もご多忙と存じますが、どうかお身体ご自愛くださいませ」といった文面で、葬儀の前日までに届くよう手配するとよいでしょう。
供花や供物を贈る
供花や供物の受取辞退がない場合は、式場に生花や果物かごなどの供花・供物を贈るのも、1つの弔意の表し方です。
葬儀社提携の花屋や専門のオンラインショップを利用し、仏式なら白や淡い色合いのものを選んで式日の午前中までに会場へ届けておくことで、祭壇を華やかに彩りつつ故人を偲ぶ気持ちを示せます。
お悔みの手紙を送る
葬儀後に、改めてお悔やみの手紙を送る方法もあります。
仏事用の無地便箋を用い「拝啓 〇〇様にはご尊父様のご逝去、誠にお悔やみ申し上げます。□□でお世話になった折のご厚情を今も忘れられません。ご家族の皆様もどうかご自愛くださいませ。敬具」といった内容の手紙を後日送れば、喪主側も落ち着いて弔意を受け取ることができます。
「何もしない」という選択
本当に気持ちの上で「これ以上、ご遺族にご負担をかけたくない」と感じる場合は、あえて何もしないという選択も重要です。香典辞退は「ご厚意は不要」というしっかりした意思表示です。その意思を尊重して、静かに参列するだけでも立派な弔意となります。
8.【参列者向け】香典辞退されたのに渡したい...どうすべき?
故人や遺族から「香典はご辞退申し上げます」と案内されたものの、どうしても弔意を形にしたい場合もあるでしょう。ここでは、3つのケースごとに、香典辞退でも弔意を伝える方法と注意点を解説します。
香典のみ辞退されている場合
香典だけを辞退している場合、別の手段で弔意を示すのが基本です。たとえば、案内に「お花や供物もご辞退」と書かれていなければ、供花や供物を贈ってかまいません。
また、受付で受付係に「お花代を渡させていただきたく、お持ちしました」と伝えて、小さな封書に「お花代」と書き、現金を包む方法もあります。
香典に加えて供花や供物も辞退されている場合
案内状や受付掲示に「香典・供花・供物ともにご辞退」とある場合、式場には何も送らず、金品を持参しないのが礼儀です。
そのうえで、弔電やお悔やみの手紙を送り、後日に「ささやかながら心ばかりの品を」としてお線香や和菓子など、手渡しではなく配送で贈る方法があります。手紙に一筆添える際は「ご厚意を尊重しつつ、心ばかりの贈り物をお届けさせていただきます」とひと言入れるといいでしょう。
参列も出来ず香典も辞退されている場合
遠方や体調不良などで、そもそも参列が叶わない場合には、まずは弔電やお悔やみ状で直接のお詫びとお悔やみを伝えましょう。
あわせて、後日に「お供えの代わり」として、季節の果物や故人の好物を配送するのも心遣いになります。ただし、案内で明確に辞退されている品目は外し、ご遺族の負担にならないように配慮してください。
9.香典辞退の意味を理解して適切な対応を心がけましょう
家族葬や直葬の小規模化に伴い、香典辞退を選択するケースが増えています。香典辞退を決めたら、参列者の混乱を防ぐためにも、訃報段階から案内状、受付掲示、死亡通知状まで「香典はご遠慮申し上げます」と明確に伝えることが何よりも大切です。
やむを得ず香典を受け取った場合には、返礼を省略しても問題ありませんが、手紙や心づかいの品でお礼を添えるといいでしょう。
参列者側は弔電やお悔やみ状、供花といった現金以外の方法で弔意を示す方法もありますが、静かに会場へ足を運ぶだけでも十分に気持ちが伝わります。故人やご遺族の意思を尊重しつつ、互いに負担の少ないあたたかな弔いのかたちを心がけましょう。
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